舟歌、子守歌、幻想曲など
ピアノ曲解説
舟歌、子守歌、幻想曲などの傑作を解説します。
舟歌 嬰へ長調 作品60
舟歌はショパンがBarcarolleの形式で書いた唯一の曲で、作曲は1845年から翌年にかけて。同時期にはロ短調ソナタ 作品58や幻想ポロネーズなど、ショパンの最高傑作がきら星の如く生み出されている。またこの時期はジョルジュ・サンドとの関係も崩れつつあったが、それでもショパンは彼女なしの生活は考えられなかった。
このショパンの舟歌にはヴェネツィアの船頭の歌は聞こえてこない。この曲はショパンの私的な感情が込められたショパンの歌である。それは極めて幻想的である。旋律、和声はガラスの如く繊細、透明でもろく、長調でありながらもどこまでも悲しい。透明で優しい和声はショパンが晩年に辿り着いた境地の所産で、後のラヴェルを予感させる。
千万変化を繰り返す音の宝石達は、ショパンの全作品の中でも最も優雅で気品に溢れている。これはショパンという極めて感受性豊かな天才のみが作り得る音楽である。
終盤の力強いコーダの部分はショパンの死を目前にしての反抗であろうか。最後曲は ff で閉じられるが当時すでにショパンには強い音をだすだけの力はなかったといわれる。これは軽々しく弾いていい曲ではない。
子守歌 変二長調 作品57
子守歌は上の舟歌とほぼ同時期に作曲されたもの。左手は終始同じリズムの伴奏を保持する。それとは対照的に、右手は万華鏡のような変化を見せる。愛らしく甘い旋律が最初に提示される。その旋律と和声を基本とし、あらゆる変奏がなされる。「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」を思わせるような細かく繊細なパッセージが繰り広げられる。
とはいえ決して技巧的を見せびらかすような曲ではない。金銀細工を散りばめたような輝きに溢れた曲。
幻想曲 ヘ短調 作品49
作曲は1841年。ノアーンのサンド邸で生まれた。当時はショパンとサンドの関係は良好であった。曲の感じはバラードに似ている。序奏は不安で憂鬱な部分と幸福な部分が交錯する。この序奏部は有名なものである。
そして情熱的な主部に至る。主部は極めて自由な発想の楽想である。この自由さはまさしく幻想的で、ショパン自身この曲を「幻想曲」と名づける以外考えられなかったのではないだろうか。ショパンの傑作の一つである。
前奏曲 第25番 嬰ハ短調 作品45
「幻想曲」と同じ1841年に作曲された。夢見るような息の長い旋律と、豊かな転調に彩られた傑作。左手は終始アルペジオの伴奏。個人的に大好きな曲の一つ。綺麗に響かすのはかなり難しい。コーダはいかにもショパンらしいピアにスティックさで飾られている。
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