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ノクターン(夜想曲)

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2010年1月 2日

ショパンの全ノクターン(夜想曲)の解説です。これ程までに美しく、情熱的で、夢想的で、幻想的な音楽は他に類を見ないと思います。ピアノという楽器でショパンのみが表現し得たものです。ノクターンというのは英語で、訳すと夜想曲といいます。ノクターンというのも恐らくフランス語の(ノクテュルヌ)が語源だと思います。

ピレスによる至高のノクターン

マリア・ジョアン・ピリスの名盤中の名盤。この女流ピアニストはモーツァルトが上手だが、このショパンのノクターンはアシュケナージ盤に劣らない極上の名演奏。繊細さと優雅さ極まるタッチで、ショパンのノクターンの持つ魅力を余すことなく伝えてくれる。

このノクターンという形式は実はショパンが初めてではなく、イギリスのジョン・フィールドという作曲家が創造した形式です。ショパン以外にもフォーレやドビュッシーもノクターンを作っていますが、どれもショパンの作ったノクターンには及びません。つまりそれだけショパンのノクターンの完成度、充実度が抜きんでているのです。

ショパンの初期のノクターンは繰り返される伴奏の上に、夢見るような旋律が歌われていきます。中期になると、初期の形葉より洗練され内容も凝ったものとなります。後期の作品は曲中に死の影を落とし、その内容は深刻なものとなります。一般的に人気のある曲は初期から中期にかけての曲が多いようです。

ノクターン 第1番 変ロ短調 作品9-1

左手は絶え間のないさざ波のような伴奏で、右手は感傷的な旋律をひたすら歌いあげる。典型的なノクターンである。まぎれもなく若きショパンの作品である。まだショパンの独創性は現われていないが、音楽は美しい。

ノクターン 第2番 変ホ長調 作品9-2

この曲を聞いたことのない人はいないでしょう。映画「愛情物語」の主題音楽として用いられています。ショパンの若い頃の作品に見られる甘い旋律が絶妙の装飾音を伴って歌われていきます。わずかに変奏して音楽が単純になるのを防いでいます。コーダは宝石の如く輝いています。 ショパンの才能が至るところに見られる名曲中の名曲です。

ノクターン 第3番 ロ長調 作品9-3

何故か有名ではありませんが、その美しさ、内容の充実度、コーダの美しさなどは絶品です。これほどの曲が有名でない、つまり人気が無いというのは不思議でなりません。コーダの美しさはノクターンの中でも随一です。個人的に大好きな曲です。

ノクターン 第4番 へ長調 作品15-1

3連符の伴奏にのって、やや息の長い美しい旋律が朗々と響く。穏やかな田園の風景を思い起こさせるような平和な響き。しかし、突如として嵐がやってくる。平和を破壊する荒々しい嵐である。この部分はなかなか技巧的で若いショパンに特有の激しさである。この穏やかな部分と荒々しい部分が交錯する構成は、バラード第2番とそっくりである。

ノクターン 第5番 へ長調 作品15-2

この傑作にはショパンの不健康な面は顔を出さない。ひたすた流麗で甘美である。細やかな連符や装飾音は見事という他ない。中間部はショパンの独創性が最高に発揮されている。 コーダはきらびやかな珠玉のごとき輝きを見せる。

ノクターン 第6番 ト短調 作品15-3

素朴で憂鬱な旋律で始まる。伴奏形も単純で技術的にも容易である。中間部は長調でコラールのような響きになる。音楽的に特別優れているわけではない。

ノクターン 第7番 嬰ハ短調 作品27-1

1835年に作曲された。もの憂く曖昧な和声と旋律で開始する。何かつかみ所のない妖しさがあります。この部分が過ぎると、だんだん速さと激しさを増していき中間部で爆発する。爆発した後、いったんは鎮まりかけるのですが、もう一度音楽は盛り上がりを見せます。左手の激しいオクターブでようやく鎮まった後、再び最初の曖昧な旋律が登場します。そして短いですが、コーダの美しさは格別です。

ノクターン 第8番 変二長調 作品27-2

ノクターンの極致とでもいうべき作品です。伴奏の形は一度も変わりませんが、右手の旋律は巧妙な変奏を絶えず繰り返します。そういう意味で、この曲は晩年の作品"子守唄"に似ていると言えましょう。もう一つ、旋律のリズムが"タイスの瞑想曲"にも似ています。凝りに凝ったショパンの傑作です。

ノクターン 第9番 ロ長調 作品32-1

明るい曲想で素朴な旋律。音楽は絶えず流れる。優しい曲調ではあるが、やはりショパン。中間部ではショパン独特の転調を繰り返す。特にコーダは極めて自由な音楽である。

ノクターン 第10番 変イ長調 作品32-2

9番と同様に素朴で明るい曲。個人的にはこの曲の方が好きである。ショパンの得意とした3連符の伴奏の上に明朗とした旋律がのる。中間部はかなり情熱的。

ノクターン 第11番 ト短調 作品37-1

たいした特徴のないノクターン。やはり憂鬱で素朴な旋律。中間部はコラールのよう。6番のト短調の作品と同じ性格の曲ではあるが、リズムに違いがある。この曲は4拍子である。

ノクターン 第12番 ト長調 作品37-2

右手の旋律は3度の和声からなり絶品。3度と6度が交錯し演奏は難しい。とは言えエチュード程ではないからいい練習になる。ショパン独自の曖昧な転調は極めて魅力的である。中間部のリズムは晩年の傑作「舟歌」と類似している。

ノクターン 第13番 ハ短調 作品48-1

ノクターンに留まらず、ショパンの全作品の中でも最高傑作の部類に属する曲です。特筆すべきはその独創性。曲は大きく三つに分けられます。始まりは静かですが、その調べは不安に満ちており嵐を予感させます。

ショパンの独創性が最高に発揮されている第二部は静かなコラールとなっています。調性はハ長調なのですが、かつてこれ程までにハ長調を美しく響かした作曲家はいないと思います。そしてだんだんと激しくなりそのまま激情的な第三部に突入します。第三部では第一部と全く同じ旋律がでてきますが、分厚い和音の伴奏がついて第一部とは異なる表情をみせています。その楽想は激しく嵐のようです。

同じ旋律でここまで異なる表情の違いをみせることのできたショパンはやはり天才です。最後は衝撃的な和音に転調した後に静かに終わります。

ノクターン 第14番 嬰へ短調 作品48-2

寂しくはかない旋律でショパンの苦悩が滲み出ている。中間部はコラールのような響きである。円熟期の作品ではあるが、特別ショパンの独創性が現れているわけではない。憂鬱な面持ちのノクターンである。

ノクターン 第15番 へ短調 作品55-1

素朴で単純な曲。とはいえ旋律は親しみやすく魅力的である。演奏が容易なのでノクターンの研究には向いている。中間部には少し劇的な表情が見られる。三連符は徐々にせき込んでいき頂点が訪れる。このあたりはショパンのセンスが窺える。コーダは3連符で長調に転調し美しい。

ノクターン 第16番 変ホ長調

ノクターンの中ではちょっと異色の曲。左手の絶え間ない3連符の伴奏は流れ続け、その上に明るく健康な旋律が響く。旋律は決して一本調子ではなく、ショパンが得意な半音進行や3連符といった複雑な表情を見せる。

ノクターン 第17番 ロ長調 作品62-1

何と説明したらいいのか分からない不思議な2小説の導入部があります。そして晩年のショパン特有の旋律がやって来ます。中間部は無調といっていい程うつろで曖昧な音楽です。この曲を素晴らしいと感じられる人はよほどのショパン通かと思われます。ノクターンの中では特に洗練されたもので、後半部分の転調は特筆もの。舟歌に似た個所がある。

ノクターン 第18番 ホ長調 作品62-2

この曲にもはやショパンの不幸な表情は見られない。悟ったかの様な落ち着いた旋律である。長調ではあるが寂しい感のするこの曲は間違いなく晩年の作品であることを感じられる。ピアノ書法を極めたショパンが腰を据えて書いた曲であろう。中間部はピア二スティックである。

ノクターン 第19番 ホ短調 作品72-1

作品番号は大きいがショパンの若い頃の作品である。多分一番最初のノクターンで、ショパンが17歳の頃のもの。情感の豊かさ、旋律、和声どれをとっても素晴らしく、ショパンが天才であるということを思い知らされる。コーダは長調に移り惚れ惚れとしてしまう。

ノクターン 第20番 嬰ハ短調 遺作

やはりショパンの若い頃の曲。絶妙な序奏、バイオリンのように美しい旋律はたまらなく魅力的。ピアノ協奏曲第2番と共通するリズムが見られる。決して単純な旋律と伴奏に頼るだけの音楽ではなく傑作といっていい。

ノクターン 第21番 ハ短調 遺作

作曲年が定かでない曲。そこそこ魅力的な旋律を持つが、構成や独創性には大きな魅力が感じられない。技術的にも容易なので、ピアノ初心者に向いているように思う。

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シロトリュフ @ShiroTruffe | Webコンサルタント・シロトリュフ

神奈川県横浜の生まれ。職業ウェブコンサルタント。好きなものはワイン、シャンパン、美味しい食べ物、クラシック音楽。自己紹介はこちら

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