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24の前奏曲集(プレリュード)

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2010年1月 2日

ショパンはバッハの平均率の影響を受け、24の前奏曲を手がけた。作曲したのは1836年から1839にかけて。ショパンはジョルジュ・サンドと運命の出会を果たし、同時にショパンの健康状態に暗い影が宿り始めた頃。そんなショパンの健康状態が作品にも当然ながら影響されている。

24というのはバッハの平均率に影響されていると断言できるだろう。異なる24の調性をまとめて(西洋音楽は大抵いずれかの調に属しており、全ての長調と短調を合わせると24になる)曲集を作った。その内容は実に豊かで、ショパンのあらゆる表情をそこに見ることができる。

曲の配列は5度循環(一曲目からシャープの数を一つずつ増やしていき、次にフラットを一つずつ減ら していく)になっている。

シューマン曰く:どの曲も、「これはフレデリック・ショパンによるものです」というはっきりした主張を感じ取ることができ、休符の中にさえ、彼を認めることができる。彼は、今日にお いて最も偉大で大胆な詩人である」。

24の前奏曲は組曲となっており、これを演奏する際は全曲をまとめて弾くのが当然である。しかし、各曲の主題には全く関連が無い。ショパンの天分が最高に発露した音楽で、ショパンのあらゆる表情、表現技巧がこの

曲集に見られる。短い曲が多いが、どの曲も最高の魅力を備えている。この曲集を ショパンの最高傑作と見なすピアニストは多い。

プレリュード 1番 ハ長調 Agitato

ごく短い走狗の中に、美しい旋律が流れる。焦燥感に支配された曲で極めて 情熱的である。コルトーはこの曲を「愛される女性の熱っぽい期待」というような言葉を残している。

プレリュード 2番 イ短調 Lento

極めて不気味な曲。個人的にはどうしてもこの曲だけは好きになれない。 作曲されたのは「革命」や「スケルツォ 第1番」と同じ時期である。ショパンの鬱な感情がよく現れている。

プレリュード 3番 ト長調 Vivace

新鮮で生きているかの様な曲。小川のせせらぎが聞こえてきそう。左手 の音型は極めて細かくそれがこの曲の最大の魅力となっている。しかしそれを完璧に表現するのは至難の業である。

プレリュード 4番 ホ短調 Largo

前奏曲の中でも特に悲しく、劇的で美しい。ショパンの葬儀の時にこの 曲と、第6番 ロ短調がオルガンで演奏されたらしい。一見技術的には難しくないように思えるが、左手の和音をppで控えめに表現するのは以外と大変である。

プレリュード 5番 二長調 Allegro molto

風を思い起こさせてくれる。3番同様新鮮な感じの曲である。短いながらも 手の込んだ曲で、演奏するにはかなりの技術が必要。演奏効果も高い曲だが単独で演奏されることはまず無い。

プレリュード 6番 ロ短調 Lento assai

右手は同じリズムを繰り返し、左手が旋律の瞑想的な曲。これも「雨だれ」 といえる。しかし15番の「雨だれ」とは連続和音の弾き方が異なる。この曲は連続する和音を二つで一つと考え、最初の音にアクセントを置き、次の音は控えに弾かねばならない。

プレリュード 7番 イ長調 Andantino

短いがあまりに有名な曲。マズルカを感じることができる。本当に短い曲だが決して単純に感じたりすることはなく、そこにショパンの才能が現れているように思える。最後の分厚い和音などはピアニスティックだと思う。

プレリュード 8番 嬰ヘ短調 Molto agitato

嵐のような曲。前奏曲の中では難曲に属する。後のスクリャービンを予感させる。 リストはこの曲を「雨だれ」と考えたという説もある。同じ音型を徹底的に繰り返すが、転調は多彩である。つまり難技巧の内に色彩を表現しなくてはならない。それがこの曲の一番大変なところである。同じことが練習曲「木枯らし」などにも言える。

プレリュード 9番 ホ長調 Largo

不思議な性格の曲。堂々とした和音が繰り返される。長調でありながらもなんとなく不吉な響きが聞こえてくるのは私だけであろうか?ホ長調でありながら透明さは微塵もない。極めて骨太な感じがする。

プレリュード 10番 嬰ハ短調 Allegro molto

これも不思議な曲。急速な下降音形が4回繰り返される。この曲も色彩豊かに弾かなくてはならない。速いパッセージでの重音が厄介な曲。ピアノの響きを知り尽くしているショパンでなければ書けない曲である。

プレリュード 11番 ロ長調 Vivace

一瞬で消える夢のような曲。とても慎み深いが曲の速度は結構速い。これぞショパンというような甘い旋律はやはりもの哀しい。あまり速く弾きすぎると曲の感じが崩れる。

プレリュード 12番 嬰ト短調 Presto

圧倒的な曲。初めは好きになれなかったが、今は特に好きな曲である。傑作の一つ。勇壮な和音は力強く鮮烈である。リズムに特徴がある。コルトーはこの曲を「闇夜の騎馬団」と呼んでいる。本当に素晴らしい曲なので聴きこんでみて!

プレリュード 13番 嬰ヘ長調 Lento

とにかく綺麗。しかしはかなくもある。中間部は何にも例えようがない。これ程の曲に説明も感想も不要です。とにかく聴くべし。

プレリュード 14番 変ホ短調 Allegro

夜の海の映像が見えるかのような曲。ピアノ・ソナタ 第2番の終楽章と全く同じ音型だが、その性格は著しく異なるように思える。その理由の一つとしてこの曲は旋律がはっきりしている。


プレリュード 15番 変二長調 Sosutenuto

俗に言う「雨だれ」。旋律はショパンの残した中でも指折り。しかし単に甘いだけではなく、その甘さの中には哀しさが潜んでいる。今にも崩れそうな脆く哀しい旋律である。そして最も注目すべきは中間部である。嬰ハ短調に転調し、一変して死の足音が、極めて不気味に、静かに響く。

不安は爆発しffとなる。それも一度だけではなく二度も爆発する。爆発後の右手の旋律は胸がはりさけんばかりの苦しさ。最後に弱々しい希望の光が降る。この曲の理解できれば、ショパンの全ての音楽を理解できるようになる。それだけ奥深い曲である。

プレリュード 16番 変ロ短調 Presto con fuoco

暗闇の下での嵐と恐怖と絶望と戦慄が幻想的に描かれている。狂わんばかりの表情を右手が表現するが、それを駆りたてるのは左手の規則的なリズム。傑作と同時に最難曲。私はリストやパガニーニの悪魔的なものをこの曲に感じ取ります。


プレリュード 17番 変イ長調 Allegro

恋にやぶれた女性が歌うかの様な旋律を持つ。しばしばメンデルスゾーンの無言歌と似ていると言われるが、それは表面的なことのみであり、音楽的な深い内容においては全く異なる。技巧は難しいものではないが、これを音楽的に表現するのは極めて難しい。

プレリュード 18番 ヘ短調 Allegro molto

極めて自由な形式の音楽。決闘にも例えられる。その劇的さは16番と同様に相当激しい。

プレリュード 19番 変ホ長調 Vivace

軽快だが美しい旋律を持っている。中々の難曲。練習曲「牧童」と同じ音型。ここで長調の旋律は、ショパンに多い哀しさは見られない。天に昇りつめていくかのような力強さを持っている。

プレリュード 20番 ハ短調 Largo

葬送行進曲。重苦しい雰囲気の曲。上手に弾くには、やはり色彩感が重要となる。

プレリュード 21番 変ロ長調 Cantabile

重音を完璧なレガートで弾かなくてはならない。美しい旋律で、中間部は情熱的である。両手重音の半音階の部分はなかなかピアニスティック。個人的には大好きな曲の一つ。

プレリュード 22番 ト短調 Molto agitato

左手のオクターブが激しい。激情的な曲。ここで全ての音は激しさを表現するためにのみ存在している。

プレリュード 23番  ヘ長調 Moderato

軽やかで流れる様な曲。極めて透明な響きである。ショパンの才能の多彩さを窺い知ることができる。

プレリュード 24番 二短調 Allegro appassionato

ショパンの才能が最高度に発揮されている傑作中の傑作。「革命」と同じ時期に作曲されており、当時のショパンの感情がよく現れている。この曲を支配するのは左手の一貫したリズムで、その上に三度の半音階やオクターブなど右手が多彩な表情を見せる。大砲な様な響きで曲を閉じる

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シロトリュフ @ShiroTruffe | Webコンサルタント・シロトリュフ

神奈川県横浜の生まれ。職業ウェブコンサルタント。好きなものはワイン、シャンパン、美味しい食べ物、クラシック音楽。自己紹介はこちら

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