スケルツォ
ピアノ曲解説
スケルツォは諧謔曲という意味。元はイタリア語で「冗談」という意味らしい。スケルツォを最初に音楽に用いたのはベートーヴェンで、彼の交響曲にはメヌエットに代わってスケルツォが用いられている。ショパンはスケルツォをピアノ独奏曲として用い、その音楽はショパンの独創性が遺憾なく発揮されている傑作といえる。
ショパンの作ったスケルツォは全部で4曲。いずれの曲もプレスト、4分の3拍子の音楽で、ショパンの激情と繊細さとに満ち溢れている。その情熱はとても「冗談」とは思えないものであり、ショパンは確固たる心情の下にスケルツォを名づけたのではないと思われる。各曲とも非常にピアノがよく響くようにできており、ベートーヴェンのソナタと似たような性格を持っている。
スケルツォ 第1番 ロ短調 作品20
1831年にウィーンで作曲された。まだ若いショパンの野心作で極めて技巧的な音楽である。大胆に響く冒頭の不協和音! つづく情熱的な第1主題はショパンの音楽でも最も激しいものといえる。中間部はロ長調で第1部の激しい音楽とは対照的である。その旋律にはポーランドの民謡が用いられている。中間部の最後には再び冒頭と同じ強烈な和音が響くがすぐに夢は覚めない。不思議な余韻の後第3部となり、やがて激しいコーダに至り曲を閉じる。リストは最後の半音階を両手オクターブで演奏したとか。
しかし完成度の高いショパンの音楽に一切の変更は不要である。最後の箇所では珍しく最強音"fff"の指定がある。ショパンもドビュッシーも最弱音と最強音の記号はあまり用いていない作曲家で、その指定があるということは、よほどの激しさを強調しているということである。
スケルツォ 第2番 変ロ短調 作品31
1837年に作曲された。このショパンの傑作が書かれたのは1837年。すでに自身の健康に相当の不安があったのではないだろうか、出だしのひそひそと語るかのようなユニゾンはそんな事を暗示しているように思える。この第1主題は極めて不健康である。しかしここではショパンの健康で幸福に満ちた表情も見られる。第2主題の旋律がそれである。ここにはショパンの幸福な表情が見える。
コーダは輝きに満ちている。「優美さ、力強さ、大胆さ、華麗さ、憎しみの深さ、愛の豊かさ」あらゆるショパンの表情を窺い知ることができる。なおシューマンはこの曲をバイロンの詩に例えている。スケルツォの中では最も有名な曲で傑作の一つ。
スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 作品39
1839年にマジョルカ島滞在の際作曲された。ショパンの愛弟子に献呈された。不吉な感のする序奏の後、両手オクターブで第1主題が提示される。中間部はコラール風でピアニスティックなアルペジオが繰り返される。二つの主題は転調を続ける。この中間部はショパンの曲の中でも特に妖しく不安で、しかし美しい。その後突然激しいコーダに入る。この曲は暗い激情が基になっている。
スケルツォ 第4番 ホ長調 作品54
1842年の作曲。この頃のショパンは社交界に出入りしている。その影響であろうか、曲はショパ ンの音楽の中で最も知的で、優雅で、透明で、洗練されている。この作品のあたりからショパンの曲は不思議な美しさに支配された、いわゆる晩年の特徴を持つ音楽になり始める。この曲は間違 いなく傑作で難曲である。
全ての技巧は純粋に音楽の表現のためだけに存在する。中間部はモーツァルトの様に澄んでいる。極めて軽快で自然に流れていく音楽は作られた音楽というより、音楽自体が昔から自然と存在しているような錯覚さえ覚える。曲は聴く者を陶酔させたまま華麗にその姿を消す。
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